狭小住宅の階段の位置は間取りの「要:カナメ」
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上下階を結ぶ移動スペースまず階段は「上下階を結ぶ移動スペース」なので、生活動線上に無理があってはなりません。家の中のどこにどんな階段をつけるかは間取りにも影響します。1階のどこと2階のどこをつなぐか、さらに3階のどことつなぐかは、動線にも影響することは一般の方でもよくわかることと思います。
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また階段は上下階をつなぐ「吹抜け」となり、光や風の「通り道」ともなるので、隣接する居室(常に人がいる空間:居間など)への「採光」や「通風」も考える必要があります。
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階段の様々なタイプさらに階段には様々なタイプがあります。
■「直階段(鉄砲階段)」(踊り場 なし / あり)
まっすぐ上がり下がりするシンプルで、床面積の小さいコンパクトな階段です。折れ曲がることがないため、縦に長いスペースが必要になります。
■「かね折れ階段(L階段)」
上がり始めの3段を3つ割りとし、その先が直線となった階段です。直階段と同様に、横に長いスペースが必要になります。
■「回り階段(行って来い階段)」
階段の進行方向が途中で折れ曲がっており、向きが変わる部分に踏み板を設置した階段です。Uターンするような形で上っていくため、スペースを節約できます。
■「折返し階段(コの字階段)」
直線と踊り場を組み合わせ、まわるように移動する階段です。途中に踊り場があるため、安全に上がり下がりできます。
■「らせん階段(螺旋階段)」
スパイラル状(渦巻き状)に取り付けられた階段です。平面的に最も少ない面積で設置でき、通常の階段と比べて幅や奥行きを必要としません。
デザイン性にも優れ、狭小住宅にも相性が良い階段と言えます。
以上、5つに大別することができ、種類により昇り口・降り口の位置が変わります。
どんな階段をどう置くかは、まさに間取りの「要」と言えるのです。 -
狭小住宅ではどんな階段をどう置くかが間取りの「要:カナメ」。そこで以下に「5つのポイント」をしぼって解説します。
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Point-1「フロア中央に階段を置く」階段を家の「ヘソ」の位置に置くことで、段を中心とした無駄のない生活動線とすることができます。とくに狭小住宅といわれる小さな家での効果は大きく、廊下を最小限に抑えた間取りが可能です。また、LDKのある階では、階段によって回遊動線をつくり出せることもあります。
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Point-2「南側に階段を寄せる」南側に居室を配置すると、北側に追いやられる廊下や階段室に光が届かなくなることがあります。順番を入れ替えて、廊下や階段室を居室の前、つまり南側に置くと、廊下や階段室に入る光を、奥にある居室に届けることができます。
階段室は吹き抜け空間なので、2階から差し込む光は階段室伝いに1階にも届きます。
階段を南側に寄せると、メリットがたくさんあるのです。
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Point-3「リビングとダイニングを階段で分ける」LDKという言葉が浸透して、リビング・ダイニング・キッチンを一部屋にまとめることが当たり前のようになっています。その場合、一部屋にまとめるだけではなく、生活動線がより使いやすくなるように階段を挿入すると、付かず離れずのほどよい距離感をもつリビングとダイニングにすることができます。
挿入する際には、リビング、ダイニング、階段室に視覚的なつながりを持たせることが大切です。 -
Point-4「2つの階段をつくる」狭小住宅と言われる小さな家で階段をつくると、その分、部屋として使える面積が少なくなりますが、それを補って余りある効果が得られます。2つの階段により、生活動線は格段に効率が良くなり、さらに上下階を含めた立体的な回遊動線が生まれて、家のなかが実際より広く感じられるようになります。
例えば、パブリックな階段とプライベートの階段を設けることにより、来客時などを考慮したパブリックゾーンと、気兼ねなく家族が短距離で各階のプライベートゾーンを結んだ、階段があれば大変便利です。 -
Point-5「スキップフロアで廊下を省く」スキップフロアとは、半階ずつの昇り降りで各フロアがつながっていく構成です。階段を建物の中央付近に置くと、昇り降りしながら屋内を行ったり来たりすることになり、階段が廊下の役割を果たすことになります。つまり、階段が廊下にもなり、無駄な動線スペースを省くことにもつながるのです。
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最後のまとめと階段の役割は上り下りする通路として、上階と下階をつなぐだけでなく、空間を有効活用し、採光や風通しを確保しすることにより、家の中の雰囲気や動線を左右することと、視覚的な要素があります。
工夫のポイントとしては、階段のタイプや位置、形状や寸法、さらに窓の大きさや配置と手すりのデザインの工夫も必要です。また階段下部のデッドスペースを収納スペースとして活用ることもでき、様々なアイデアがあります。
階段のタイプ
・「側桁階段」踏板を壁や板で両側を挟んだタイプ。
・「箱型階段」踏込み板と踏込み板の間の奥に蹴上板という板があるタイプ。
・「スケルトン階段」蹴込み板がないオシャレなタイプ。
・「らせん階段」螺旋の中心にある支柱で踏板を支えるオシャレなタイプ。
階段の位置
・家の「壁」に沿って配置すると、階段下のスペースが有効に使えます。
・家の「角」に配置すると、家全体のスペースを有効に使えます。
・部屋の「中央」に配置すると、常に家族の自然な触れ合いのある間取りにすることができることなど、ライフスタイルに合わせた間取りとの関わりを考慮しながら階段を配置することが大切です。
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