首都圏の狭小住宅を得意とするK⁺Aの「狭い家」の魅力と工夫。
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店舗併用の狭小住宅は最小限にして根本的。ケイプラスアーキテクト【K⁺A】が最初に狭小住宅を手がけはじめたのは2011年の9年前ぐらいからです。インターネットを介してK⁺Aの「狭小住宅」専門サイトへ資料請求と問合せでした。内容は近隣商業地域の準防火エリアで敷地面積は約15坪(東京都目黒区)の現存の木造2階建て店舗併用住宅を、木造3階建て店舗併用住宅へ建替え希望のお問合せでした。現状の建物が元々木造の長屋2階建てのを解体したうえで、接続面を補修し、その既存隣家に限りなく近接させた建築計画です。木造三階建ての店舗併用住宅として成立するか半信半疑でした。敷地が広ければ、あれもできるこれもできるとなって、逆になかなかまとまりがつかないものです。しかし、結果的に狭いと必然的に用途が最小限かつ根本的なものに絞り込まれていきます。そのうえで建主のお客様の夢と希望をかなえ、狭くても快適な環境をつくるために、さまざまな工夫が必要になります。難しいからこそやりがいがありました。玄関を外に張りだしたり、バルコニーを設けず、屋上に物干しスペースとしてのルーフバルコニーを設けたり、さまざまな工夫をこらしました。
下2枚の画像は、デザイン提案時にK⁺A専属の意匠デザイナーによる手描きの外観パースと、1階店舗部分の内観パースです。A3横サイズの紙に、主に鉛筆表現と若干の淡彩仕上げをほどこしています。
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職住一体の狭い家が注目されるのは価値観の転換。まさに社会現象がその背景にあります。女性の社会進出や若い人の都心回帰志向、職住の近接・一体化、金利の低下、地価の下落、景気の低迷などが重なって、身近な暮らしへの関心の高まりです。「大きいことはいいことだ」という価値観から、小さなこと、身近なことに価値観を見出すようになってきました。そもそも、「狭小住宅」と呼ばれるものに明確な定義はなさそうですが、K⁺Aで依頼が多い敷地面積は10坪~15坪~18坪位で、20坪以下となります。
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狭小住宅の基本はワンフロア-・ワンルーム。最初は山手線の内側、本当の都心部に多かったのですが、次第に杉並、世田谷、目黒への首都圏へと広がっていきました。そうしたエリアは人気あって坪単価も高いので、敷地はどうしても小さくならざるを得ません。それが大体20坪以下だったのです。
15坪の都内建築地で商業地域の建ぺい率は80%なので、そこに建てられる1階フロア分の面積は12坪(約40㎡)。必然的に建築をタテに積み上げていくことになります。基本はワンフロアでワンルーム。間仕切りの壁をできるだけ減らし水平方向の広がりをつくることが肝要になってきます。家具も造り付けでなく可動式にして、家族の成長や暮らしの変化に合わせてフレキシブルに対応していくのが理想です。狭いからこそ、そうせざるを得なくなったわけですが、そもそも家というのは100%完成させるのではなく、未完成の方が楽しい。洋服を着替えるように、その都度その都度、自分がどう暮らしたいのか、それに合わせて造り変えていくもの。家は買うものではなく、造る、育てる。それは、家の大小に関わらず、家づくりの根本的な楽しさだと思います。 -
住宅にとって大切なのは広さではなく心地よさ。狭小住宅は、どう頑張っても物理的に大きな家、広い家にはなりません。しかし、これまで首都圏の多くの狭小住宅を手がけてきたK⁺Aでは、たどり着いた結論は「住宅にとって、広さはそれほど必要ではない」ということなのです。住宅にとって重要なのは、あくまでも居心地のよさです。たとえ狭くても、工夫次第でいくらでも居心地のいい家はつくれます。そもそもT&Wにとって居心地のいい家というのは、どういうものなのでしょうか?究極的に居心地がいいところというのは、寝室であり浴室です。しかし、それはあくまでパッシブなスペースの話です。キッチンやダイニングのようなアクティブな空間でも心地いいと感じられるには、絶対的に自然光や風、等の自然感に接しているという感覚が必要だと思います。
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住宅にとって大切なのは広さではなく心地よさ。理想は、大自然の中の小さな家です。結局、人間も動物です。外の気配や緑、風、光と言った自然を感じることで心地よくなる。その点、狭い家というのは、広いマンションとは違って、どこにいても外につながっていることが可能なのです。建ぺい率が80%ということは、20%は外部とつながれるということです。だから狭さを感じさせず、むしろ狭いからこそ、心地いい。寛げる工夫が大切だと思います。
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空間の心地よさ決めるのは人間の五感。K⁺Aの小さくても元気で可愛い家「Mini House」のすべてに共通する特徴として「自然植栽を配する」という手法があります。狭い家をより一層狭くしてしまうのではと思われがちですが、植栽があるだけで豊かな自然が感じられ、心理的な心地よさに作用するのです。心地よさに絶対的な数値というのはありません。例えば、天井が高ければ心地よいかというと、そうではないのです。四畳半に3mの天井だと落ち着かない。むしろ2mでも十分なのです。さらに言うと、広さと高さだけでなく、床や壁の色や素材であったり、光や風、気温や香りといった、人間の五感が空間の質にとても大きく影響するのです。
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