『鉛筆のチカラ』・『手わざのコダワリ』
2015.01.14今年初のブログを更新させて頂くのは、K⁺Aで意匠・デザインを担当しております、チーフデザイナーの千北 正(チギタ タダシ)です。本年も、どうぞ宜しくお願い致します。 年始の仕事始めの週末から、風邪をこじらせ気管支炎となり、昨年末更新予定が今年遅れての投稿になってしまいました。日頃の健康管理不行き届きで、お恥ずかしい次第です。
昨年、年の瀬が押し迫って、我社で、設計・施工させて頂きました、K・H様邸を幸いにも、我社のプロデューサーの暮石さんのはからいで、インテリアコーディネーターの百瀬さんと同行訪問させて頂くことが出来、ラッキーな一日となりました。
施主であられるご夫婦は、共に工芸作家で、個展(「木成り」展)にご招待を頂き、制作作品の温和さと、精緻さを兼ね備えた作品に魅了された次第です。
主に、木や漆を素材として、家具や雑器を木地から製作。また、住空間・公共空間の金箔工事や漆を施した玄関扉などの内装工事も多く手がけられており、ご夫婦は、『スタジオ温』をユニットで主宰されております。
ご夫婦の作品を通して、今から40数年前に、大学時代の美術・デザイン史や建築史の授業で知った、著書「ラディカル・デザインの思想」でも馴染み深い、英国の思想家で詩人の「ウィリアム・モリス」や、著書「日本美の再発見」でも有名なドイツの建築家(1933年に来日し、約3年半日本に滞在)「ブルーノ・タウト」、そして、日本民藝運動の父「柳 宗悦」までも思い出し、ご夫婦の創作活動は、建築工芸家と言わせて頂いても過言ではない印象を強く享けた次第です。
今回、K・H様邸を設計した、T&W設計顧問で建築家の小畑先生と野澤先生、そしてインテリアコーディネーターの百瀬さんはもちろんですが、暮石さんの総合プロデュースと、工藝作家のK・H様ご夫婦の『手わざのコダワリ』とのコラボレーションなしには完成しえなかったお住いです。
特に内装の仕様や、建具類等は得意技が活かされ、必見です。
特に一階の接客応接室の土間スペースと、つづきの和室の建具は、手漉き和紙(東京松屋)に「木版手摺」を施したものや、版木に当てて凹凸文様を打ち出した、「金唐革紙」が、自然光によりエンボス加工表面に品格ある優しい浮彫感を与え、時を超えた普遍的優美しさが、スリットの開口部からさしこむ、やわらかな光で、空間にしっとりとした陰翳との共演を奏でています。
ここで、自画自賛になってしまいますが、ご訪問の際、ご夫婦からT&Wへこころ動かされたのは、ご提案(2案)の際、私が日頃愛用の鉛筆(ステッドラー STAEDTLER)で描いた、手描きの外観パースの『鉛筆のチカラ』とお褒めのお言葉を頂き、大変恐縮に思った次第です。
新しい建築技術と建材等に加え、生活感と経年変化を大切にした仕上げ素材や空間構成、視覚的にもイメージを追想させる、フランスの哲学者ガストン・バシュラールの著書「空間の詩学」の時空間の表現を感じさせる住まいです。そこには、家族代々で使われてきた、照明器具やさりげなく置かれた生活道具(昔のミシンやガスストーブ)等の調度品を巧みに採り入れた感性にも魅了させられます。
室内空間全体の明るさも、現在の一般住宅からすると、若干暗く感じるかもしれません。
自然光(採光)・人工光(照明)を含め、かつて日本人が生活してきた空間を表現してきた、谷崎純一郎の「陰翳礼賛」の世界感を彷彿させてくれます。1階の和室の応接室を含め、2階のリビング・ダイニングは落ち着いた、気持ちのいい世界へ導いてくれる空間です。2階のリビングから3階への吹き抜け空間にアクセントを与えてある「あらわしの化粧梁」にも古材が生かされ、空間にひと味違う深みと、何か懐かしい思いを与えてくれます。
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