『稀代の巨匠・建築家アントニ・ガウディが残したもの』
2015.08.26スペインの建築「サグラダ・ファミリア」(聖家族教会)が着工から144年で完成へ!!
スペイン・カタルーニャ出身の建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)が手掛けた未完成の巨大教会「サグラダ・ファミリア」(聖家族教会:カトリック教会)。 この世界遺産は以前、完成までに300年くらいはかかると言われていました。 ところが、現在では2026年の完成が見込まれており、1882年の着工から144年で完成するといわれています。この「工期半減」の裏には、3DプリンターやCNC(コンピューター数値制御)の石材加工機といった最先端IT(情報技術)の活躍があっての事です。
K⁺Aで意匠・デザイン(チーフデザイナー)を担当しております、千北正(チギタ タダシ)です。
今回ブログ更新に何を「テーマ」にしようか思いを巡らしている時に、自宅近くのコンビニで見かけた本が、きっかけとなりました。購入した本は『Casa BRUTUS特別編集 ガウディと井上雄彦 (マガジンハウスムック CASA BRUTUS)』の一冊です。
私は、40年前の大学時代から、アントニ・ガウディの作品には、強く興味を抱いておりました。彼の想像力と造形力、それを支える、設計施工(構造)技術力には、目を見張るものがあります。そして、彼は、パトロンにも恵まれたラッキーな建築家でした。
私は、26年前(1989年)にデザイン学校で教鞭をとっていた時代、夏の教員研修旅行で、名古屋市で開催された「世界デザイン博覧会」に行く機会を得ました。名古屋城天守閣を舞台に、ガウディの展覧会「ガウディの城」で、原寸大の構造シミュレーション模型や建築模型、家具等々に遭遇しました。
そこであらためて、「サグラダ・ファミリア」がいまだに建築中であることを、再認識したことを思い出します。当時1882年の建築着工から既に100年以上が経過しており、「完成まで200年以上はかかる」といわれていました。・・・・私が生きている間には、完成はしないものと諦めたのを覚えています。ところが現在、サグラダ・ファミリアの完成予定は、12年後の2026年と大幅に前倒しされているという話を知りました。私が生きている間に完成した姿を見られそうな気配になってきたのです。
※急ピッチで建設が進むサグラダ・ファミリア。「生誕のファサード」側より
この予定が現実のものになれば、サグラダ・ファミリアは約144年の工期で完成する予定です。1980年代に見込まれていた300年という建設期間は、この30年間で半減することになります。図面では表現しきれなかったこの建築の設計・施工に、「3Dソフトウエア」や「CNC加工機」が使えるようになったことも、「150年以上の工期半減」の大きな力になった事を知りました。
以前は御用達の石工職人がコツコツと手作業で作り上げてという事を聞いていましたが、時代は変わって石の加工はコンピューター制御の石材加工機で行って、構造部材には石積みの構造ではなく鉄筋コンクリートが多用されるようになりました。日本の在来の木構造部分が棟梁の手刻みではなくプレカットになったのと同じ時代の流れを感じます。
■逆さ吊り実験で構造解析
1882年に建設が始まったサグラダ・ファミリアは、直線、直角、水平がほとんどない外観に数多くの彫刻が網羅され、建物と一体化されています。 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング:コンピューター内にバーチャルな建物を構築し、その情報を設計・施工・管理など全プロセスで活用する手法)も、CNCの工作機械もなかった19世紀から、 よくぞこのような複雑な建物をつくってきたものだと、巨匠「アントニオ・ガウディ」をはじめ、建設プロジェクトの関係者には敬意を払いたい気持ちになります。
今から、26年前には、数本の塔があるだけでしたが、最近では急ピッチに建設が進み、2010年には大空間を持つ礼拝所が公開されました。途中から枝分かれして天井に伸びる複雑な柱が林立した空間は、圧巻です。
※[右]途中で枝分かれして天井に伸びる樹木のような柱 「写真:家入 龍太(建設ITジャーナリスト)」
ジュアン・マタマラ(ガウディが建築家になる前から仕事を共にした仲間)の鉛筆スケッチ。カタルーニャ工科大学バルセロナ建築学部ガウディ記念講座、バルセロナ©Càtedra Gaudí
このように、12年後の完成を契機に(冥途の土産に・・・?)
「ガウディ作品探訪」と題して、スペイン・バルセロナをスケッチBook片手に、旅行を企んでおります。
この世に生きていればですが。・・・(*´∇`*)・・・
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