狭小住宅におけるキッチンと収納の工夫
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1、狭小住宅には、空間になじむキッチンが必要です。家づくりにおいてキッチンのプランを練るのは、とても楽しい作業です。カントリー調のキッチンやインテリア雑誌に出てくるような斬新でモダンなキッチン、あるいはステンレスのヘアライン仕上げで統一したプロ仕様のキッチン等々、夢は膨らみます。
しかし、狭小住宅においては、キッチンの存在があまり目立ちすぎると、まるでキッチンの家というような印象になってしまいます。
もちろん、家のコンセプトの中心がキッチンであれば問題はありませんが、小さな空間での見せ方としては間違っています。
広く見せたいのであれば、キッチンはリビングやダイニングと色や素材を合わせて、自然と溶け込むようなデザインにすべきです。
たとえば、リビング・ダイニングの壁の色と合わせてり、キッチンの足元を軽やかに見せるために巾木部分をへこませるなど工夫が必要です。つまり、「家のテーマ」に合わせてキッチンのデザインを考えるとが大切です。 -
2、狭くても使いやすいキッチンはレイアウトしだい。狭小住宅の場合は、キッチンの広さが十分にとれないことがあります。しかし、がっかりする必要はありません。キッチンは広ければ使いやすいかということでもないからです。
たとえば、小料理屋さんの厨房をカウンターからのぞき込むと、とても狭い空間をうまく利用して料理をしています。家のキッチンも同じで、たとえスペースが限られていても工夫次第で使いやすく、素敵なキッチンになるのです。小さなキッチンで最も大切なことは、本当に必要な道具たちをキチンと収納できるつくりになっているかどうかです。キッチンに置くモノも、できるだけ小さくいろいろな使い方ができたり、収納時にかさばらないモノを選ぶといいでしょう。モノがしかるべき場所に収まり、作業スペースに何もない状態をキープできれば、日常料理をするスペースはそれほど広くとる必要はありません。小さくてもキッチンは工夫しだいで十分機能的につくれるのです。 -
3、家事動線がスムーズなアイランドキッチン。キッチンは人がせわしく動き回る場所。家族でワイワイと料理をしたい人にはおすすめなのは、アイランドキッチンです。動線に行き止まりがなく、回遊できるレイアウトなので、大勢で作業をするときもストレスレスです。狭小住宅に設けるときは、空間を圧迫しないようにリビングダイニングとなじむデザインにまとめるようにしています。
ダイニングテーブルとキッチンカウンターの連続性も重要です。
できたての料理を盛り付けて運ぶ流れがスムーズな位置関係であることです。ちなみにアイランドと並列にしてカウンターがある場合、通路幅は75㎝~85㎝がベストです。広すぎるとムダに歩く必要が出てきます。テーブルとつなげることで家族と話しながら調理の手を動かしたり、時々手伝ってもらったりというコミュニケーションも生まれます。アイランドによる家事動線の効率化は時間のムダを省き、家族のコミュニケーションをよりいっそう深めてくれるのです。 -
4、キッチンはみんなが集う場所にすることが理想です。開放的なキッチンというのは、一種のエンターテイメント空間だと考えます。料理をするときの人の動き、調理する音、料理から立ちのぼる香りなどは、そばで見ていても楽しいものです。料理のつくり手は、真剣な表情で食材に向き合い、見事に料理というアート作品を毎日つくっているのだと考えると、すごいステージなわけです。
「キッチンはお母さんが一人で料理を作る場所」という認識を変えていきましょう。キッチンは家族みんなとコミュニケーションをとる場所になるのです。また、開放的なキッチンは、お部屋全体を広く感じさせるメリットもあります。そして、つねに見られているという意識から、キッチンまわりをきれいにしたくなります。みんなが集まるキッチンは、笑顔や会話が生まれます。おいしい料理がつくれなかったときでさえも、後で振り返れば家族のいい思い出です。
そんな思い出が育めるキッチンにしたいものです。
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